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完全なる事業承継の定義

完全なる事業承継とは

後継者の意思で経営ができるような形で事業を承継

完全なる事業承継とは何でしょうか。後継者が100%自分の意思で経営ができるような形で事業を引き継ぐことです。つまり、完全な支配権のある事業承継です。別の言い方をすると、株主代表訴訟を心配せずに、リスクに挑戦できる経営を可能にすることです。

そのために、自社の株式を100%所有する必要があります。他の事業承継の本では51%株式を持っていれば、取締役の地位は安泰だと書いてあります。

しかし、問題は49%の株式を持っているその他の株主から、株主代表訴訟を起こされたり、経営判断にクレームがつけられたりすることです。特に、株主代表訴訟はわずか1万3千円の訴訟費用で、会社の役員に会社に金を返せという訴訟ですから、クレーマー株主というか、モンスター株主にとっては、自分はノーリスクなのに、会社の経営者に損害賠償を負わせたり、名誉を奪うことができるのですから、「正義の味方」の株主にとっては痛快(?)なことでしょう。

経営者からすると、リスクを取らなければ利益という果実を得られません。しかし、いつも成功するとは限りません。新規事業が成功したときは何も言わないが、失敗すると株主代表訴訟のおそれがある。株主代表訴訟を避けようとすると、挑戦的な新製品、新技術、新市場への投資ができません。これでは完全な事業承継ができたとは言えません。

大会社がM&Aをしたときに、完全支配を目指すのに、中小同族会社が完全支配を目指さないのはどうしてでしょうか。大会社と違って、中小会社はしっかりした管理組織がありません。経営管理体制がスリムだから経営判断が迅速にでき、大成功のチャンスがあるのです。大会社は経営管理体制がしっかりしていますから、逆に新規な投資の意思決定が遅れてしまいます。

中小同族会社の長所である経営意思決定の迅速さを生かすためには、完全支配を目指すべきです。

ある会社は譲渡制限が付いている株式しか発行していないから、51%の株式を持っている経営者の地位は安泰だと言っていました。

その会社の株式を所有していた株主の一人が、株式を担保に、借り入れをしました。ある日突然、金融会社の男が会社にやってきて、ある男が金を返せなくなり担保に預かっていた株式を取得した。名義を書き換えしてほしいと言いだしました。断ると、さもなくば、その会社の株式を引き取ってくれる人を紹介しろというのです。株式は相続税評価額の数倍の高い金額で売却したいというのです。何度かの交渉の末、やむを得ず、経営者がその株式を買い取ることになりました。大変な損害(キャッシュアウト?)です。

51%の株式を持っているから経営者の地位は安泰であるということと、損害が発生しないということとは別のことです。

経営者が、資金繰りの必要で増資したり、取引の都合で株式を持ってもらったり、相続や贈与で配偶者や子供に株式を持たせているケースが多いと思います。あなたは、従兄弟の子供の名前、生年月日、性格が完全にわかりますか。時間が経つにつれ、株主の素性はわからなくなります。トラブルが発生したときに、人間関係だけでは解決できないようになってきます。

経営者は三井十一家のように、本家とこれを支える分家が永遠に会社を支える体制を夢見ます。しかし、現代では「家長(かちょう)」や「家族制度」などの風習が廃れ、家督相続の習慣がなくなり個人の権利意識が強くなったので、利己的な権利意識が独り歩きして、不満はクレームとなって表出します。一昔前の「○○一家」「○○ファミリー」の意識が薄れて、本家の家長が「俺に任せろ」と言えば解決できた時代は終わりが来ています。

先代の経営者の考えで築いた株主関係は事業承継をする段階で解消すべきです。取締役や、従業員や、取引先などの一部に引き続き株式を持ってもらうことがあるかもしれませんが、それも後継者の判断ですることです。

私たち第一コンサルティングは、大会社がM&Aで中小企業を買い取った後、100%の株式を取得して完全支配を目指すのをよく目にしてきました。完全支配を目指すのは、経営意思決定を徹底し、組織再編を容易にし、少数株主のクレームを排除するためです。

中小企業は市販の本のように51%の支配で足りるのでしょうか。少数の株式を持つ残りの49%の株主の中に、いつモンスター株主が現れるかわかりません。かならず、100%の株式保有を目指してください。

それでは、100%の株式保有はどのようにしたら実現できるのでしょうか。

  第一コンサルティング株式会社は、中小企業の事業承継を応援します。私たちは、お父さんと事業承継の話をしてみます。私たちは、息子さんの考えを聞いてみます。

※平成24年12月当時の法律により記載している記事です。その後の改正には対応しておりませんのでご留意ください