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財産調査

財産調査とは

「不必要な財産」や「過去のしがらみ」を引き継がないために

財産調査は財務デュージェリデンスとも呼ばれ、M&Aの中間局面で買収予定会社が「ゴミ(不良資産)」を買い取らないために必ず実施する手続きです。相続の場合も後継者が現経営者から事業を承継するときに、「不必要な財産」や「過去のしがらみ」を引き継がないために財産調査を実施してください。必要により、不動産鑑定士やその他の専門家から鑑定評価を受けます。

財産調査すると、財産調査報告書を提供します。不良資産は会計上も税務上も除却損、売却損、貸倒損失、公害の認定損など、適正な評価額で損失を実現しますが、確実な損失として鑑定評価をいたします。

財産調査結果は、相続税の純資産評価額や、類似業種比準価額の純利益、純資産の比準要素を引き下げる根拠資料になります。

貸借対照表の調査は、資産の部に計上してある金額は資産性があるか、負債の部に計上してある金額に網羅性があるかについて行います。

1.資産の部

貸借対照表と元帳の残高が整合しているかまず調査し、対前期で大きな増減があればその原因と、増加している場合の資金的な裏づけを調査します。

現金預金は通帳の残高や残高証明書の残高と照合し、論理的に一致しているか調査します。

売掛金は、売上げ記録とランダムに突合するほか、長期売掛金の回収遅延理由について調査します。回収予定表や年齢調べ表を作成し、回収遅延対策表を作っている会社が普通です。得意先ごとに回収状況を調査して、契約上回収が遅くなる理由が分かればよいのですが、得意先の倒産や資金繰りの悪化や、トラブルがあれば回収不能見込み額について貸倒引当金や貸倒損失の計上額を調査します。その他の金銭債権も同様です。

商品や製品について、棚卸表で在庫の実在性を調べるほか、長期在庫について個別(又は商品群別)にその原因を調査します。もし、売却が困難なら相当の減額をします。

仮払金や立替金や繰延税金資産についても、清算が遅れているようなら、その理由を調査して、回収不能額について減額をします。

固定資産について、適正な減価償却がなされているか金額の多いものについて再計算するほか、現実に使われていない固定資産についてその理由を調査し、必要な減損を計上します。

繰延資産や、無形固定資産についても事業との関連性から減損が必要なものがあれば減損を計上します。

投資有価証券は、所有目的と市場性について調査し、時価で計算します。非上場有価証券については、当該会社の決算書と最近の財政状態を質問あるいは必要によって訪問して調査します。

役員や株主に対して仮払金や貸付金がある場合、回収予定表を調査し、回収不能なら必要な減額をします。

担保に入っている資産や供託金は、その元となった借入金や取引保証金について、必要性と負債計上額の妥当性を調査します。

粉飾決算で資産に計上してある金額を調査して、実態に合わせて費用処理や損失計上をします。

2.負債の部

買掛金は見合う仕入との関係を調査して計上漏れがないか調査します。

支払利息から逆算して借入金等の計上漏れがないか調査します。支払利息が他の勘定に含まれていないか、元帳を通査して調査します。

賞与引当金や退職給与引当金、役員退職給与引当金は税務上加算になることから計上していない会社があります。これらは労働規約などで必要ない場合は良いのですが、過去に支払実績があるなど支払の原因があるなら、理論値で計算して計上します。

偶発損失に対する引当や、近く引越しや工場の閉鎖が予定されている場合は必要な引当金を計上します。

公害、近隣騒音、土壌浄化、訴訟やクレームがあれば、必要な引当金を計上します。

その他、税務上の否認可能性があれば、否認の可能性を指摘します。

(ただし、税務当局との見解の相違について責任を追うものでもありません。)

かつてデュージェリデンスの後、従業員の不正が発見され、財産調査の不足を指摘されたことがあります。しかし、財務デュージェリデンスは不正の摘発が目的でないこと、取引相手先に行って反面調査をすることができないこと、刑事事件のような捜査権限がないことから、おのずと限界があります。

しかし、相続財産の実態が分からなければ、事業承継計画や相続税の節税計画の立てようがありません。それは、目をつぶっては運転できないし、コースが分からなければバーディを狙うことができないのと同じです。

 第一コンサルティング株式会社は、中小企業の事業承継を応援します。私たちは、お父さんと事業承継の話をしてみます。私たちは、息子さんの考えを聞いてみます。

完全なる事業承継は、税法の知識だけで実現できません。会社法や信託法の知識だけでも実現できません。今は、総合的な知識が必要な相続コンサルティングが求められています。

※平成24年12月当時の法律により記載している記事です。その後の改正には対応しておりませんのでご留意ください